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「……いえ、先輩方に問題があるわけじゃないです」
みちるの眉が困ったようにハの字に垂れる。先輩方には問題はない。それは別のところで問題が起きているということだ。「ほら、もう少し考えてからでも、相談なら……」とみちるが言葉を続けると、それを拒むように杏奈が語気を強めた。
「十分に考えた結論です」
怯えた様子のみちるをかばうように知子が前に出る。鋭さを持って細くなった双眸が杏奈を見つめた。
「鈴木さん。そういう話はみんなの前でするべきじゃないと思う。部長の私や川上先生に直接言われへんかった? これじゃまるで辞めないでって止めてほしいみたいやで?」
「そんなつもりじゃないです」
「鈴木さんがそういうつもりじゃなくたって、他人から見ればそう映る。それじゃ、みんなの前でわざわざ言った意図はなんなん?」
決して責め立てるような口調ではなかった。だけど、知子の言葉の節々から怒りを感じる。見慣れない雰囲気の彼女に、部員たちに緊張感が走った。
「特に意図はないです。ただ、この文化祭で辞めると決めていたので。タイミング的にみんなに伝えられるかなと思っただけです」
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