「エピローグ」

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 まだざわめきの残る校舎がオレンジ色に染まっていく。電気の消えた誰もいない廊下の向こう側で、ポツリと音楽室が佇んでいた。カーテンの隙間から漏れた光が、一筋の線となって、扉が開いた準備室の方まで伸びている。みなこは「失礼します」と声をかけて、その中へと歩を進めた。 「おつかれー」  軽く声をかけられて、「お疲れ様でした」と返す。カチャカチャ、とサックスのハードケースが音を立てた。少しだけ背伸びをしながら、里帆が棚に向かって手を伸ばす。 「わざわざ呼び出してごめんな」 「いえ、それは構いませんけど」  里帆は下ろした髪を撫でる。「よいしょ」と声を出して、ハードケースを棚に押し込んだ。 「今回、清瀬ちゃんにはきつい役回りさせてもうたかもな」 「こうなるって、全部、分かってたんですか?」 「まさか、奏ちゃんにあんな思いがあったとは思わんかったよ」  奏があんな風に本音をさらけ出すのは意外だった。だけど、奏がベースを初めた理由をみなこは知っている。それは姉への憧れだ。けど、どうして奏はこの学校を選んだのか。奏の家で抱いた疑問の答えは、すごく単純なものだった。
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