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「けど、……本音は、清瀬ちゃんが杏奈を説得してくれることに期待してた。やっぱり杏奈は頑固で私の言うことは聞いてくれへんから。後輩にこんな期待するなんて駄目な先輩やろ」
それでもみなこが杏奈を説得する確証はなかったはずだ。淡い期待を込めての行動だったのかもしれない。「いえ……私は何も出来ませんでした」とみなこが返すと、「清瀬ちゃんが責任を感じる必要は一ミリもないやん」と里帆が口端を緩める。自分はあくまで首を突っ込んだだけ、そういう役回りにしてくれたのはきっと里帆だ。
「杏奈先輩はどうするんでしょうか」
「どうやろ。少しは頭を冷やした方がええやろうけど、心変わりはあったんちゃうかな。ありがとうな」
杏奈の気持ちを繋ぎ止められているとすれば、自分ではなく奏だ。そのお礼は奏に言ってあげるべきだろう。きっと里帆は言うだろうけど。
「これに懲りて、もう少し練習に励んでくれたら文句なし」と里帆は笑みをこぼす。
「里帆先輩はどう思ってますか? 勝ち負けがあること」
杏奈の気持ちは理解出来る。彼女のプライドが傷つけられたことも、それで自暴自棄になってしまうことも。
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