「エピローグ」

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「うーん。悔しさはもちろんあるよ。まさか今年、井垣ちゃんみたいな子が入って来ると思わんかったし。コンボは奪われるんだろうな、って脅威に感じた」 「やっぱりそうですよね……」  もし来年、自分よりも遥かに上手な一年生が入ってきたら。一体なんの為に頑張っているのだろう、と努力することを辞めてしまうかもしれない。――けどな。と里帆が上履きを鳴らす。 「そこで諦めたら本当にすべてが無駄になってしまう。劣等感から逃れる方法は、逃げるか勝つか。……逃げることは楽やけど、私がそれを選択しないのは、最後の最後で逆転できるかもしれん、と思っているから。どれだけ無謀でも手を伸ばし続けたいことがある。掴みたいものに手を伸ばさないのは、死ぬのと一緒や」  ちょっと大げさやったかな? そう付け加えて、里帆は歯並びのいい口元を緩めた。みなこは「私もそう思います」と頷く。自分がどうして杏奈の退部を止めたかったのか。そのせいで奏まで退部してしまう時の恐怖、その理由が明確になった。 「……お疲れ様です」
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