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めぐとみなこの声が重なる。「あからさまに嫌な顔せんといて! 普通に傷つくわ」と里帆は破顔する。仕方ないじゃないか、役職を任されるなんてこれまでの人生で経験がないんだから。それはめぐも同じだったらしい。「そういうの任されたことないんですよ」と口を尖らせた。
「意外と二人とも経験ありそうやのに」
「里帆先輩は経験ありそうです」
「あ、委員長もやってたことあるって聞きました」
みなこがそう言うと、里帆は眉根を下げて、「伊坂?」と声を低くした。
「そ、そうです」
「あいつー。……まあ、委員長とかの経験はあるけどさ。部長っていうんは一度もないよ。それに私だってまだ部長にはなってない。けど、この一年、織辺先輩の背中を追いかけてきた。それは理想の部長像やと思ったから。つまりやな。この後の一年間は、あんたらの準備期間やねん。私の背中を見てなんて言われへんけど。どういう部活にしたいか、どんな音楽を奏でたいか。それと向き合える時間や。急に指名されるよりは、随分良いシステムやと思わへん?」
「まぁ確かに……」
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