「プロローグ」

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 祖母からお盆を受け取って、みちるはこたつ机の上に料理を並べていく。冬は布団をかぶっているこたつも、夏が過ぎたばかりのこの時期はまだ裸のまま。夏でも布団をかけておいてくれれば、ここで昼寝ができるのに。そんなことを考えながら、空になったお盆を祖母に返した。 「今、ご飯とお味噌汁も持ってくるから待っとってね」 「うん。いつもありがとうねぇ」  みちるの関西弁は、みんなと少し違う。引っ込み思案で友達が少なかったみちるは、小さい頃から祖母とばかり遊んでいた。祖母は愛媛県出身で、そのせいでみちるにも伊予弁がうつってしまったのだ。  今みたいに、気軽に人と話せるようになったのはいつからだろう。問いかけた答えは、意外にも簡単に自分の中から返ってきた。人と仲良くなれたのはジャズのお陰だ。みちるは、スマートフォンを操作してアプリを立ち上げる。優しく穏やかなジャズのメロディが流れた。
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