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ご機嫌に揺れるポニーテールのそばで奏が微笑みを浮かべている。奏の手には、巾着の形をしたバッグが握られていた。二人の視線がこちらを向く。
「みなこは?」
佳奈の言葉はきっと同意を求めている。本能的にそうだと分かり、「私も焼きそばが食べたいなー」とみなこはわざと平たい声を出した。焼きそばが食べたいのは、別に嘘じゃない。だけど、ちょっとだけ意地悪したくなった。
「本当は、たこ焼きって顔」
「そんなことないよ?」
「ホンマに?」
佳奈が眉根に作った皺を、奏は少しだけ心配そうに見つめている。それに気づいたのか、佳奈はクスクスと笑みをこぼした。どうして笑われたのだ、と奏は不思議そうに眉根を下げる。
「冗談やから」
「奏ちゃん、本当に心配そうにしてた」
他人の顔色を伺いすぎるのは、奏のいいところでもあるし悪いところでもある。きっと、奏じゃないと文化祭の杏奈との一件は問題にならなかったはずだ。だけど、同時に奏じゃなければ、杏奈と桃菜の問題も解決も出来なかったはずなのだ。
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