1話「秋祭り」

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「清瀬ちゃんは相変わらずかたいなー。谷川ちゃんですら、すっかりフレンドリーになってんのに」 「私は初めからフレンドリーでしたよ!」  頬を赤らめながら、奏が語気を強めた。その双眸は、憧れの色に彩られて杏奈を真っ直ぐに見つめている。確かに、奏は初めから杏奈と仲良くなろうとしていた。それは奏にとって杏奈が特別な存在だったからだ。  去年の文化祭で杏奈のベースを聴き、奏は宝塚南のジャズ研に入ることを決めた。理由は、杏奈のベースの音が奏の姉の音に似ていたからだ。ベースを初めたきっかけである姉の面影を杏奈に感じて奏はこの部活を選んだ。  そして、杏奈は奏のその思いに答える形で勝負から逃げないことを決めたらしい。どれだけ敗れ続けて惨めな思いをしても、たとえ特別になれなくても、挑戦を続ける覚悟を、だ。 「先輩たちからこうして遊びに誘って貰えるのは初めてなので嬉しいです」 「あー確かに初めてかぁ。うちらってわりと部活以外ではまとまりないもんなー」 「うーん、去年も先輩たちに誘われた記憶ないから、伝統的にこういう空気感なんかな? 活動以外はあまり顔を合わさないって、なんかプロっぽい?」
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