1話「秋祭り」

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 くるっと神社の方へと踵を返した里帆に、その場で指先を宙でくるくると回しながら美帆が明るく言葉を返す。二人は似ているが、ちょっとだけ里帆の方がせっかちだ。半年も見ているとセーターなんかなくても些細な違いに気づける。「おぉ、確かになんかプロっぽいですね!」と七海がはしゃぎながら美帆に同意して手を打った。  一同は、神社の方へ歩き出す。祭り囃子が徐々に近づいてきた。鳥居をくぐるタイミングで、めぐが里帆へと声をかけた。 「ここのお祭りは毎年来てはるんですか?」 「うん。この辺りは地元やから。夏祭りもあってな、そっちは本格的なだんじりがあったり。小さい頃から美帆とよく来てたで。太鼓なんかも叩けたりとか」 「おお太鼓! うちも叩きたいです!」  太鼓を叩く真似をした七海を見て、杏奈が「確かに大西ちゃんは上手かもなー」とケラケラ喉を鳴らす。 「はい! ゲーセンでよく叩いてますから」  杏奈が言っているのはそういうことじゃない。確かに『太鼓の達人』で七海に勝ったことはないけど。そんな心の中で毒づいていたみなこのそばに、ぐっと里帆が近づいて耳うちをしてきた。
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