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「文化祭では清瀬ちゃんには迷惑かけたから。ちょっとくらいみんなに奢らせて」
「いえ、そんな迷惑だなんて。それに私がしゃしゃり出ただけで、頑張ったのは奏ですから」
里帆は、本当に真面目やな、と言いたげに肩をすくませる。短く息を吐き、肩に乗っていた髪がふっと持ち上がった。
「それじゃ言い方を変えよう。先輩っぽいことをしたいだけっていう私のワガママに付き合ってくれる?」
綻ばせた里帆の頬に、屋台の明かりが落ちる。ぼやけた赤い光は、彼女のタートルネックの赤と混じり合って、柔らかい表情に染み込んでいくようだった。
「そうですね……そう言われるとなんとなく受け入れやすいです」
「へへ、でしょー」
子どもみたいな笑みをこぼして、里帆は真っ白なスニーカーでトントンと石畳を弾いた。低めの鳥居をくぐり、左右に短い間隔でいくつも並んでいる背丈ほどの灯籠の間を抜けていく。
――――この先輩のようになりたい。
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