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みなこはふいにそう思う。かつての上級生が里帆をこのポストに据えたのは、彼女にリーダーとしての素質を見出したからだろう。里帆は優しさだけじゃなく、しっかりと周りを見てバランスを取れるコミュニケーション能力がある。彼女は満足していないらしいけど、すでに知子にないものを持っていると、みなこは密かに思っていた。こうして、後輩を誘っているのだって、彼女が作りたい部活のビジョンが見えているからだろう。
だけど、里帆が部長に選ばれた理由がそうであるならば、自分が副部長へと昇進するポジションに置かれているのも同じ理由のはずだ。
自分は先輩たちに何を期待されているのだろう。自分の長所は自分ではよく分からない。里帆は、「この一年間は準備期間で向き合う時間だ」と言った。だから、今はどんな先輩になりたいか、それを思い描いておくしかない。
知子や里帆のような頼れる自分を想像してみる。だけど、神社の中に漂う厳かな雰囲気とざわめきに飲み込まれて、チンケな想像は口の中に入れた綿菓子みたいにぱっと消えてしまった。
「そういえば、美帆先輩も一緒なんですね」
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