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「私が地元のお祭りに来たらあかんって言うんはこの口かー!」
美帆が七海の唇をつまみ上げる。ごもごもとした声で七海は必死に弁解を述べた。
「だって美帆先輩は、健太先輩と来てるのかと」
「だって向こうとは地元が別やし」
七海の唇をつまんだ手が緩んだ。プハッと七海が、水面から顔を出したみたいに大げさに息を吸う。「ほんとは一緒に来たかったくせに」と杏奈が悪戯なトーンで目を細めた。
「そりゃそうやけどさ」
否定しないところを見ると、付き合っていることを隠す気はないらしい。美帆と健太は堂々と一緒に帰ることもあるし、二人の関係性は周知の事実みたいだ。みなこはついこの間、みんなに言われるまで気づいていなかったけど。恋愛というものに疎くない者からすれば、気づかない方が異常らしい。
「私、気になってたんですけど!」
顔を真っ赤にした奏が、興奮気味に美帆に詰め寄る。秋らしいチェック柄のワンピースの裾からはバーガンディ色のブーツが覗いていた。
「いつから付き合ってるんですか!」
「きょ、去年の夏から……」
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