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みなこにとって恋愛というのはどうも捉えきれないものだ。興味のある佳奈や奏は女の子らしいとは思うし、人が幸せそうにしているのは見ていて微笑ましい。けど、いざ自分の立場に置き換えると途端に観測不可能なものになる。
「あー、もうすぐ大会か……。そしたら三年生は引退やな」
寂しそうな里帆の言葉は、すぐに祭りのざわめきの中へ吸い込まれていった。この賑やかさをみなこは何度か経験したことがある。舞台の上から見下ろす客席の雰囲気とよく似ているのだ。みなこはそっと目を閉じて、まだ見ぬ大会のステージを想像してみた。
歓声のざわめき、降り注いで来る拍手、大きなステージの上で演奏する自分の姿。――瞼を開けた先にあったのは、いつの間にか買っていた唐揚げを頬張る七海の姿だった。
みなこにとって、長くあっと言う間の一ヶ月が始まった。
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