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先輩たちがいない時は、こうして佳奈が積極的にアドバイスをくれた。一年生の中で一番うまいのは佳奈だ。いや、部活内でもトップスリーに入っているはず。そんな佳奈のアドバイスをみんな素直に聞き入れる。
ちなみに、三本の指を埋めるのは、部長である知子と天才と誰もが認める桃菜だ。
「それじゃ、もっかい頭からいってみようか!」
「七海は走り過ぎ! 少しは落ち着いて」
みなこが叱りを入れると、七海はぷくっと頬を膨れさせた。不満を発散するように、バスドラムが二度、ドスドスと低い音を立てる。
「ちょっと早くなっただけやん」
「そのちょっとが問題やろ」
「うぅ、みなこがいじめてくるぅ」
「いじめてへんから」
助けを求めて佳奈の方を見れば、「谷川さんのベースをよく聴いて」と肩をすくませた。佳奈に言われては反論できないのか、七海は素直に「はーい」と返事をする。
「はじめから素直にそう言ってればいいのに」
「なら、佳奈みたいに的確なアドバイスをしてくださーい」
悪戯に弾まされた声に苛立ちを覚えつつ、みなこは「はい、はい」と返す。すると隣から、クスクスと笑いが漏れてきた。
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