2話「アドバイス」

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 先輩たちがいない時は、こうして佳奈が積極的にアドバイスをくれた。一年生の中で一番うまいのは佳奈だ。いや、部活内でもトップスリーに入っているはず。そんな佳奈のアドバイスをみんな素直に聞き入れる。  ちなみに、三本の指を埋めるのは、部長である知子と天才と誰もが認める桃菜だ。 「それじゃ、もっかい頭からいってみようか!」 「七海は走り過ぎ! 少しは落ち着いて」  みなこが叱りを入れると、七海はぷくっと頬を膨れさせた。不満を発散するように、バスドラムが二度、ドスドスと低い音を立てる。 「ちょっと早くなっただけやん」 「そのちょっとが問題やろ」 「うぅ、みなこがいじめてくるぅ」 「いじめてへんから」  助けを求めて佳奈の方を見れば、「谷川さんのベースをよく聴いて」と肩をすくませた。佳奈に言われては反論できないのか、七海は素直に「はーい」と返事をする。 「はじめから素直にそう言ってればいいのに」 「なら、佳奈みたいに的確なアドバイスをしてくださーい」   悪戯に弾まされた声に苛立ちを覚えつつ、みなこは「はい、はい」と返す。すると隣から、クスクスと笑いが漏れてきた。
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