2話「アドバイス」

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「奏、なんで笑ってんの」 「ごめん、ごめん。二人のやり取りが可愛らしくて」 「やったー、奏にかわいいって褒められたー」 「七海のことは褒めてへんから」  こういうやり取りが喧嘩でないことを奏も分かってきたらしい。それはそう思わせるお気楽な七海の素質的な部分が大きいのかもしれないけど。佳奈とのやり取りの場合、本気だと思われるのは仕方のない気もする。佳奈は冗談を言う様な性格には見えない。 「もう」と拗ねた素振りをしたみなこの頭を、真顔のままの佳奈が不器用にポンポンと撫でた。  こちらのやり取りを見ていた航平が、「真面目に練習しろよー。もうすぐ大会のオーディションもあるんやから」と呆れた声を出す。 「ごめん、ごめん」  謝りながら、みなこはふと視線を時計の方に向ける。先輩たちが来るまではもう少しだけかかるだろうか。  時計の真下の壁には過去の大会成績の表彰状が飾られていた。大層な額縁に入れられている去年の成績は「奨励賞」。何も賞を貰えていないわけじゃないが、宝塚南が目指しているのは「最優秀賞」だ。決して満足できる成績じゃない。
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