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「ほら、もっかい行くで。ちんたらしてたら先輩たち来てまうから」
「はーい」
一同のまばらな返事に、航平はやれやれと言いたげに肩をすくませた。
*
「一年生みんな集合ー」
知子のように手を打つ里帆に呼ばれたのは、上級生たちが徐々に集まりだした頃合いだった。
里帆は、すぐに目の前に集まった一年生を見渡して満足げに頷いた。なぜか、みなこたちの後ろにひょっこりと美帆もいる。それに対して、里帆は少し不服そうに眉根を潜めた。
「なんで美帆もおるん?」
「別にいいでしょ? 邪魔はせんから」
本当だろうか、と目を細めた里帆の低いツインテールが揺れた。珍しく美帆の方は髪を下ろしている。いつもは揃えているのに。「喧嘩でもしたんですか?」と不躾な質問をした七海に、二人は仲良く咳払いをした。
どうやら図星だったらしい。
「なんの喧嘩ですかー」と七海が訊ねると、「別に喧嘩はしてないやんなー」と美帆が平たい声で返す。
「あんたが私のお気に入りのワンピースを勝手に着ていったからやろ」
「いっつも借りたって怒らへんやんか」
「あの日は使う予定やったの!」
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