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腰元に手を当てて、里帆が鼻息を荒くする。怖さよりも可愛さが際立ってるのは、黙っていて方が良いに違いない。
「それで、俺らを集めたのはなんでですか?」
航平が話を本題に戻すために質問を投げた。確かに、こうして一年生全員が同時に呼び出されるのは珍しい。
里帆は、つい感情的になってしまったことを恥ずかしがるように空咳を一つ飛ばして続けた。
「再来週の日曜日なんやけど、近くの保育園で演奏して欲しいねん。二年生は今週修学旅行、三年生は模試があって、合わせる時間が少ないから。それに保育園に大所帯で行くのもあれやから――」
「一年生だけで演奏しに行って欲しいってこと」
最後の言葉を美帆に取られ、里帆はぐっと眉根に皺を寄せた。邪魔はしないと誓ったはずの美帆は知らん顔だ。恐らく、はじめからこのつもりだったんだろう。
「俺らだけで行くんですか?」
そう航平が訊ねると、美帆が「そうやで」と笑みを浮かべて返した。里帆が不服そうに続ける。
「毎年の恒例やねん。去年は私らも行ったから。伊藤ちゃんと清瀬ちゃんが中心になってまとめて」
「私たちがですか?」
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