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どうしたものか、と考え込んだみなこを見て、みちるは嬉しそうに頬を緩める。その目はまるで子どもを見つめる親のようだった。
「選曲って難しいですね」
「私の大変さ分かった?」
「痛感してます」
みちるは、普段からジャズ研が演奏するほとんどの曲を決めてくれている。例年は、部長と副部長で決めるらしいが、知子にその気がないせいだ。別にみちるに押し付けているわけではないはず。ただ単純にみちるを信用して、全権を預けているんだと思う。
「みちる先輩はどうやって曲目決めてるんですか? 基準とかそういうのはありますか?」
「その時の全員の実力ももちろん考えてる。難しすぎる曲をチョイスすれば、グダグダになって収集がつかへんようになってしまうしね。何曲も演奏するライブの時は、全体のバランスも考える。盛り上がりとかも意識しつつ、違和感のないように。曲の認知度はもちろん、誰が目立つ曲なのか、ずっと支え役をやっている人はいない編成になってるかとか。……でも、結局はみんなで演奏して楽しそうなセットリストが一番かな」
――――楽しそうな。
その一言に、みちるの曲決めの信条が集約されている気がした。
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