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「ううん。今日はみなこの家で勉強教えてもらうからそっちから帰るで」
先に七海が航平の方へ駆け寄っていく。その光景が妙に胸に痛い。この痛みを以前もどこかで感じたことがある。思わず開いた心のアルバムに収められていたのは、中学時代に航平がサッカー部のマネージャーと遊びに行っているのを聞いたあの時だった。
すごく単純で、恥ずかしくて、定期入れみたいな色の言葉が頭を踊る。ドキドキと弾む胸の鼓動を説明できる言葉は一つしかない。どうして自分は、航平にそんな感情を抱いているのだろう。問いかけた答えは一向に返って来ない。
「どうしたんみなこ? 早く帰ろうや」
「う、うん」
また踏切が鳴り響いた。右に左に動く赤いランプを横目に、みなこは坂を登っていく。航平がくれたプレゼントはどういう意図のものだったのだろうか。ただの友人としてのものなのか、それとも。高校になって大人びただけ。もしかすると、幼馴染に上げるプレゼントに深い意味など無いのかもしれない。だけど、航平の誕生日にはお返しを上げても良いかもしれない。そんな風に思った。
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