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その様子を眺めながら、みなこの視線はふと部室の隅でベースの調整をしていた杏奈の方へ向いた。仲良く話す三人とは明らかに距離がある。里帆、美帆、杏奈では仲が良いが、桃菜と杏奈は共存出来ないらしい。なんとなく、嫌な空気が流れそうなものだが、本人たちが割り切っているせいか、妙な緊張感や嫉妬心は無いように思えた。だけど、それは決して大人な対応ではない。もっとネチネチとしてどんよりとした幼稚なにかだ。
「清瀬ちゃん、清瀬ちゃん」
見つめていたこちらに気づいて、杏奈は頬を緩めた。ガサガサ、とカバンを漁りはじめたのを見て、みなこは彼女のそばに近づく。「ふふ、お土産買って来たで」と杏奈は可愛らしい小包を取り出した。
「ありがとうございます。中身はなんですか?」
「開けてみてよ」
ピカピカと光るリボンを解いて、みなこは包装を剥がす。中に入っていたのは、小さなギターのキーホルダーだった。ずっしりとした重厚感は安価なものには思えなかった。
「わー、ありがとうございます。でも、これってシンガポー、ル関係あります?」
「えー! 別にシンガポール、関係なくても良くない?」
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