6話「集中」

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「せっかく行ったんやから、関係あるものに越したことはないでしょ」 「なんでもええって言ったやん!」 「まぁそうですけど。……でも、気に入りました! ギターケースに着けておきます」 「へへっ、ありがとう」  照れを隠すように、杏奈はみなこから視線を外して、少し離れたところにいた奏にも声をかけた。みなこが渡されたものと同じ包装のものを彼女にも差し出す。 「キーホルダーですか! ありがとうございます」 「谷川ちゃんにはベースな」  満面の笑みを浮かべながら、奏はベースのソフトケースにキーホルダーを取り付ける。それを見て、杏奈が自身のベースケースをくるりとその場で反転させた。 「実は、谷川ちゃんとはお揃いやねん」 「ほんとだ! とっても嬉しいです」  素直に喜ばれたことが恥ずかしかったのか、頬を指先で搔きながら、杏奈は「ははは」と下手くそな笑みを浮かべた。 *  オーディションを翌日に控えた日の練習は、午前中のセッションが終わると、個人練習の時間に当てられた。部員たちは最後の調整に余念がない。今回のオーディションでは本戦で演奏するコンボのメンバーの選定がされるはずだ。
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