6話「集中」

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 ジャズの面白いと思うところは、曲が作られたその時代と対話をしながら、アドリブで「今」を衝動的に音楽に変えていくところだ。自分が今、どこにいるのか分からなくなりそうなくらい、曲の世界に没頭出来れば、どれだけ楽しいだろうか。 「みなこー、休憩せんの?」  ふと、七海に声をかけられ、みなこは時計に視線を向けた。かなり集中していたらしい、さっきお昼を食べたばかりだと思っていたのに、短針は十六時を少し過ぎたところにあった。部室の外は少しだけ日が傾いているはずだ。 「詰め過ぎは良くないでー」  七海の背後からめぐがひょっこりと顔を覗かせる。その後ろには佳奈と奏、さらには航平までいた。 「ほんまに集中してたみたいやわ」 「みなこちゃん頑張ってるね」 「……コンボに受かりたいから。大樹先輩を倒すのは難しいだろうけど、でも諦めたくない」  そう語気を強めたみなこに、めぐが微笑ましそうに表情を緩めた。ツインテールの毛先を指に絡めながら、「私たちも気持ちは同じやって」と息を吐く。 「めぐちゃんも頑張ってるよな」 「織辺先輩倒すのは、何か奇跡でも起きてくれな厳しいけどな」
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