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肩をすくませためぐに、「めぐならやれる!」と何の根拠もなく七海が拳を突き上げる。おどけた七海の態度に、突っ込むこともせず、めぐはこちらを向いて小首を傾げた。
「それはそうとして、意気込んでるとこ悪いけど、最後の一時間は来週の練習に当てたいんやけど大丈夫?」
「うん。ごめんごめん、一人で集中してて」
「まぁ、オーディションは明日やしな」
両手を後頭部に据えて、七海がケラケラと笑みをこぼした。ジャズ研の専門のドラマーは、七海しかおらず、コンボのオーディション合格はほぼ決定的だ。七海が余程の怠慢なミスをしない限り、彼女の実力ならば選ばれることは間違いない。
「通しで練習する?」
そう訊ねた航平に、めぐが「うーん」とうねり声を出しながら少し熟考して答えた。
「それがええかもなあー。MCのところもちゃんとやりながら、本番を想定してやってみよか」
「台詞も考えといた方がええよな。休憩中にぱぱっと考えとくわ」
「ほんまにぃ、ありがとう」
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