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案の定、男はα属性だった。
この世界では軍人、研究者と言えばα、実験体(保護種と呼ばれているが)と言えばΩと相場が決まっている。
ちなみにβはというとごく一部の例外を除いて基本、黙殺されていた。
――分かり易過ぎるほどに、わかりやすかった。
これを君に手渡せば、『提出』になるが、一体どっちなんだ?と、男は未だに延えんと続けている。
おれは身分証を男の手ごと、掴み取った。
掴んだ手を引っ張ると、男の上体は容易くカウンターへと乗り上げた。
グッと近付いた男の顔へと、おれはささやく。
「さっさと寄越せよ。それごと、全部おれに――」
「な」
何をするんだ!と男が言う前に、おれは男へと口付けた。
男の目が大きく見開かれ、焦点を失っていく。
頬の上の赤みが顔全体へと広がっていく。
おれはそれらを、口付けながら見ていた。
「輝悧、止めなさい」
「ったく・・・・・・遅せぇよ」
飼犬にアッサリと盗み食い許してんじゃねぇよ。
おれは男の手を放し、振り返る。
そこには、おれの目下の管理者の志條が立っていた。
志條の目が、おれから男へと滑っていく。
おれも、志條の視線の後について行った。
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