実験体は嚙み付く

5/5
前へ
/23ページ
次へ
 金の燭台とはかつてあった七大国の印、――象徴(シンボル)だった。 実際にあるんだかどうかまでは知らない。 建国が最も旧い、このエフェゾ皇国が第一位の座に就いていた。  志條が指を解き、雅塚を促す。 「どうぞ、こちらです」 「ありがとう」  先立つ志條に、雅塚が付き従う。 一度だけチラリと後ろを、――おれを振り返った。 おれは笑ったままでいた。  志條と雅塚との後ろ姿が完全に視界から消えてから、おれは二人の後をゆっくりと追い始めた。 犬か狼かになって、獲物を付け狙う気持ちそのままだった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加