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それは、枯れいずる木の葉のように。一枚、また一枚と記憶が落ちてゆく──。
それでも、落ちた枯れ葉が地に降り積もり根を守るように、暖かな時間がゆっくりと過ぎてゆく。
隣には、何十年と寄り添ってきたおじいさんが遊具ではしゃぐ子供たちを眺めている。孫でもなんでもない、誰の子かもわからない。
それなのに、貴方の瞳は優しくて。
何度も別れてしまおう。そう決意した頃もあったけど、気がつけばお互い歩くのも億劫な歳まで一緒にいる。
「不思議な縁ですね」
ふいに突いて出た言葉に、おじいさんはきっと何のことか解らない。
解らないはずなのに、
「そうだなあ」
と、わたしへの返答なのか呆けた声が耳に届いた。
わたしとおじいさんは幼なじみでもなんでもなく、友達の恋人の友人という知人程度の間柄だった。
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