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着々と空気を読まないことが上手く働いてコミュニケーション力を発揮している莉子の高校生活は、このまま順風満帆で恙なく過ごしたかった。
しかし、嵐というのは被害に遭う人間が引き起こすのではないということ。
必ず原因がある。
「狛江。ちょっと。」
自主練習を始めて数日後、またしても昼休み、今度は夏美や由貴と一緒に第二音楽室に入ろうとしたところ、先に来ていたのだろう奏斗が第一音楽室から顔を出して莉子を呼んだ。
「え、やだ。」
「やだじゃねえよ。用があるから呼んだんだろうが。」
用がある方が来いよと莉子は思ったし、態度にも出ていたのだろう。
むっとした顔の奏斗が、第一音楽室から出て来て、莉子の前に立った。
夏美と由貴は、びっくりして固まっている。
「いいんだな?」
「はあ?」
「他の奴らに聞かれてもいいんだな?」
「私に恥じることなど何もない!」
いや、あるだろう、赤点のテストとか。
そんな具体的なツッコミは入らなかったが、さすがに夏美が「いや、いろいろあると思う」と言ったのは仕方がない。
莉子の態度に、奏斗の目つきが悪くなる。
「ほーう。それじゃあ言うぞ。あの時おまえの従兄弟が着ていたトレーナーの店。」
「わああああ!何てこと言うの、バカー!」
恥じることなどなかったが、言われたくないことはある莉子の叫びが、奏斗の言葉を遮った。
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