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莉子たちが第二音楽室を出ると、奏斗が演奏しているはずの第一音楽室の前に数人の女子生徒がいた。
そのうち3人は莉子のクラスの子である。
王子モテモテだなーと思いながら階段を降りていると、由貴が莉子の腕をつついた。
「あのさあ、莉子。気をつけてね。」
「何、何?」
びっくりして莉子が足を止める。
夏美も同じく止まって由貴の話に耳を傾ける。
「あの子ら、最近王子のことで騒いでるでしょ。去年、あの中の2人と私、同じクラスでさ。ずっと王子のことでぐちゃぐちゃやってたのよ。」
「ぐちゃぐちゃって何?」
「王子が他の女子と仲良くしないかどうか見張ってんの。莉子のクラスだった女子が、嫌がらせされたはずなんだよね。」
「・・・それ知ってる。」
夏美がぼそっと言ったので、莉子は今度は夏美の発言にびっくりした。
「いや、噂だけしか聞いてないんだけど、呼び出したとか何とか。」
「たぶんそれ本当だから。だから、さっきみたいに王子としゃべってると、莉子、目ぇつけられるから。」
さっきという言葉に、莉子は音楽室前のやりとりを思い出した。
思い出し、そして吠える。
「大太鼓がお似合いだって小馬鹿にされたあげく目ぇつけられるなんて、どんだけ不幸!」
「わあ!莉子、しっ!聞こえちゃう!」
由貴が慌てて莉子の口を塞いだ。
「まあ、そうなるよね。でも、私だってさっきの見て疑っちゃったもん。王子、女子と話すってほとんどないって言う話だから、授業以外で1対1でしゃべってるのってレアなんだよ。」
「そんなレアいらんわー!」
いい迷惑!と吐き捨てる莉子に、夏美が「莉子の春は遠いねえ」と生温い笑みを浮かべ、由貴も「莉子のこの性格知ってたら誰も疑わんのにねえ」と苦笑した。
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