レッツ・エンジョイ、2年生

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お互いの秘密だと約束したはずなのにと、莉子は奏斗を睨みつけたが、奏斗の方はしれっとしている。 「だから呼んだのに、おまえが悪い。」 「くっそ、この猫かぶり王子めえええ!夏美!由貴!こいつ、こんな奴なんだよ!」 楡川の非を訴える莉子だが、莉子と楡川の間に何があったのか分からない2人には共感しようもない。 むしろ、由貴の視線が「やっぱり仲いいんじゃん」と冷めた感じになっているのが莉子には痛い。 「誤解なんだよう、2人とも。」 莉子の半べそをかきそうな説明の様子に、楡川の方が察した。 「あ、俺、こんながさつな奴、無理だから。」 「こっちもだわ!何てこと言うんだ、レディーに失礼な!」 「落ち着きなさいって、莉子。で、楡川くん、莉子に何の用?この状況、莉子に迷惑がかかるんだけど。」 冷静な夏美の言葉に、楡川も「だから他の奴に知られないよう呼んだのによ」とぼそりと吐き捨てるが、夏美や由貴もいるところで呼ぶのだから知られないのは不可能だ。 「おまえ、いつも友達といるから、教室でも廊下でも声かけられないだろ。」 「知ってる!世界に広げよう、友達の輪だから!」 「わけわかんねえこと言ってんじゃねえよ!だから、教えろってあのときも言っただろ!おまえの従兄弟が着てたトレーナー、どの店で買ったのか教えろって!!」 業を煮やした奏斗が怒鳴ったことで、夏美と由貴がきょとんとした顔になった。 「トレーナー?」 「店?」 『これはあれか、あの時勝手に嘘の名前を使ったことの人魚の呪いか!おのれ人魚、姿を現さなくても迷惑をかけるとは!』と莉子はもう説明なしでは逃れられないこの状況に頭を抱えた。
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