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玄関を出ると駐輪場に着く前に、莉子達は奏斗に追いついた。
「なあ、狛江とレンさん、2人乗りしてくの。」
奏斗の質問に、それ以外どうしろとと莉子が返す。
そもそも前回も今回も自転車で自宅を出ているのは莉子だ。
徒歩と自転車とでは行動範囲が大きく変わる。
それに、何と言っても楽だ。
オルトレトンに会う前と別れて帰宅するまでが。
「おまえ、レンさんにそれ貸して、俺の後ろに乗ってく?」
奏斗の申し出に、莉子は目を丸くした。
「は?王子の自転車に?いや、それ・・・」
他の女子に見られたらマジでいじめられる、今度は本気で狩られると、さすがの莉子も首を横に思い切り振る。
「安心しろ、奏斗。俺の脚力は莉子1人後ろに乗ってもまったく影響ない。」
「そ、そそそそう!レンは強いし平気だから!」
てか、オルトレトンの言動と非常識な交通違反に注意しながらでないと、安心できないから!と莉子は言葉に出来ない理由を心の中で叫んだ。
2人乗り自体アウトなのだが、そこは警察に見つかりませんようにと願う。
「いや、狛江が自転車漕ぐのかと思ったから。」
「レン、自転車練習したのよねー。」
「簡単に進むので、後ろに重い物を乗せた方が俺は安全に行けるようだ。」
「重いもの!重いものって言った!私は重りかっっ!」
乙女に何てことを!と莉子はぷりぷり怒った。
かくして、予想外のメンバーで彼らは市唯一の水族館「シートピア日本海」に向かったのだった。
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