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学校で奏斗が言った通り、ゴールデンウィーク中の水族館は親子連れで非常に混んでいた。
人混みもそうだが、ガヤガヤと結構うるさい。
「オル、レン。かなりうるさいけど大丈夫?」
ホールで莉子はオルトレトンに尋ねてみた。
1500円まで払って、やっぱり無理とか言われたら、1人で外で待ってろと言うしかない。
来たからには、きっちり1500円分楽しむ気満々の莉子なのだ。
「やかましいが、まだ我慢できる。そういうものだと思えばいい。それより、あれは海か。」
オルトレトンが指さした方向。
薄暗いホールを進んだところに、砂浜や岩壁などで磯を表現し、波の動きを再現した「潮の海岸線」コーナー。
ゴツゴツした造りだけかと思いきや、サンゴ礁があったり色とりどりの
魚やイソギンチャクなどの生き物も居て、それがほどよくライトアップしてあるので結構綺麗だ。
しかも波の動きまで再現されているので、その動きでそれらも揺れて動く様はなかなか興味深かった。
その水槽の前はスロープになっていて、移動しながら徐々に下がるので、まるで海底に近づくような錯覚も感じられる。
「あの魚は見たことがある。」
こっそりオルトレトンが莉子の耳元で囁いた。
やっぱり日本海で生きているだけのことはあるねえと思った莉子は、オルトレトンが続けて「味は今ひとつだった」と言うのを聞き、大声じゃなく耳元で言ってくれてありがとうという気分になった。
『スーパーとかで見かけないじゃん、あんなカラフルで小さな魚、大きな声で言ってたら王子に「どこで食べた?」なんて聞かれかねない、ああちょっとは学習してくれて本当にありがたいよオルトレトン。』
やはり莉子が料金の元を取るべく純粋に水族館を楽しむのは厳しそうだった。
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