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展示される魚は、日本海を離れてグローバルに。
世界の魚たちコーナーでは、カラフルな魚や聞いたこともないような魚の水槽が続いた。
「これは初めて見る。」
オルトレトンが立ち止まってそう言ったのは、巨大なピラルクが悠々と泳ぐ大きな水槽の前だった。
隣の水槽にはたくさんのピラニアがなかなかの密度で泳いでいる。
「外国の魚だからねえ。」
日本海にはいないかなと莉子が言うと、オルトレトンは興味深そうに頷く。
「直に。」
「見たいなとか言っても無理だから。」
「獲りたい。」
「そっちか!」
ピラルクとピラニア、生息しているのはアマゾン川、しかも淡水だ。
人魚とは地上並みに相性が悪いはずで、さらに距離的にも不可能ではないだろうか。
人魚の移動手段は海路一択。
ああ、それでも両手でびちびちと動くピラルクを掲げて「獲ったぞー!」を叫ぶ姿が容易に想像出来るのは何故か。
「レンさん、すげえな。アマゾンで巨大魚と格闘とか、テレビ番組になるんじゃねえ?折戸探検隊とかな。」
それはそれでものすごく嫌だと、莉子は顔を顰めた。
今日の夕方別れた後にオルトレトンから何の連絡も入らなくなったら、彼が日本海を北回りか南回りかは分からないけれど太平洋に出て、赤道近くを走る暖流に乗り、南アメリカ大陸まで出かけていったと思おう。
バイバイ、オルトレトン、途中で釣られないでね、外国籍の船の船底に尾ビレで穴を開けちゃダメよ、日本船籍もダメだけど、などと莉子が脳内で別れの言葉まで浮かべていると、館内放送が流れた。
これからイルカショーが始まるらしい。
混んでいるので観覧希望のお客様は早めにお集まりくださいとのこと。
「どうする?」
奏斗に尋ねられ、莉子たちはイルカショーを見るために歩を速めた。
オルトレオトンは何があるのかよくわからない様子だったが、大人しくついてきてくれるのがありがたい。
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