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イルカショーは、屋外のスタジアムと呼ばれるところで行われる。
そこに向かう途中、タッチ水槽コーナーの前を通った。
ここは浅い水槽にヒトデやウニ、ナマコなどがいて、子供達が自由に触れるようになっている。
そう言えば保育園のときに立ち寄ったときに、大人気だったなあと莉子は覗き込んだ。
莉子の脚が止まれば、自然とオルトレトンと奏斗の脚も止まる。
「前々から思ってたんだけどよ。」
ゴールデンウィークの今日も賑わっているコーナーに、奏斗が声のボリュームを落とした。
「これって触られてる生き物弱ってすぐ死ぬんじゃねえの?ほら、魚にも人間の体温て高すぎて火傷みたいになるから、素手で触るのよくないとか言ってなかったか。」
そう言えばそんな話を聞いたようなと、莉子は考える。
子供達には生き物と触れあって慣れてもらいたい、愛着をもってもらいたい、生態を少しでも体感してもらいたい、水族館に興味や好感をもってもらいたいという意図はわかる。
しかし、捕まったあげく握られ水から持ち上げられるヒトデ。
そっと戻してねなどという表示などおかまいなしに、ぼちゃんと投げとされるウニ。
水の中でつつかれるナマコ。
「子供は喜んでいるんだけどね・・・たまーに嫌がっている子に無理矢理触れって言ってる親もいるけど。」
こんなところで水族館批判はしたくないけれど、しかも保育園時代ここでナマコを鷲掴みにしてウヒウヒ笑った過去もあるけれど。
こういうのを見て、オルトレトンは不愉快にならないのかなと莉子はそっと顔を覗き込んだ。
「あの黒いとげとげのやつ。」
「・・・・・・美味いとか言うんだったら、発言しなくていい。」
「さすが莉子。」
おまえは食欲しかないんかーい!と、オルトレトンにツッコミをいれかけた莉子は、もしかしてこんなにオルトレトンの心情を心配する自分は限りなく繊細で心配性で線の細い女子なのではと錯覚をもたらせた。
そんな繊細な少女は、本来なら人魚と強引な交流などもたないし、面白がって兄のダサTシャツは着せないし、今日のことだって帰宅した観察ノートに全部書き込もうと決心などしないはずなのだが。
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