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莉子が赤くなった頬を両手で隠していると、オルトレトンがイルカから目を離さずに呟いた。
「声が聞こえているわけではないが、あの目つきや表情は面白がっているんじゃないか。」
「そ、そうなの?イルカって知能も高いのよね?ああやって餌をもらうことって、その、なんていうか・・・」
「そうだな、強いて言えば・・・」
オルトレトンは考えこむような仕草をした。
イルカと会話を交わしたわけではないので、彼なりに今のイルカの見た目から導き出しているのだろう。
「こんなことで喜ぶ人間って変、おもしろーい、そんなところだな。」
「マジ?」
意外と軽いというか楽観的というか。
隣で聞いていた奏斗が、ぶはっと吹き出した。
「あっははは!それ最高!イルカの方が人間より一枚上手だったらすげえよな!」
これもジョークだと思って奏斗は笑ってくれているらしい。
莉子にしてみればひやひやものだ。
ついオルトレトンにあれやこれやと尋ねてしまうものの、奏斗には気取られないようにしなければならない。
高い位置に吊されたボールに、イルカたちが次々とジャンプをして鼻先を当てていく。
かと思うと、2匹ずつ並んで水面に上半身を出し、下半身の力だけで後退したり、同時にジャンプをしたりと動きも多彩である。
『はーい!元気なイルカさんたちでした!皆さん、今日はショーに来てくれてありがとう!またお会いしましょうー!』
元気な女性飼育員さんの声と共に、音楽が変わる。
イルカたちの演技時は軽快な曲がかかっていたのだが、終わるとともに静かでゆったりしたBGMになる。
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