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「よかったねー、イルカが頭よくて付き合ってくれて。」
「付き合ってくれたのはそうだが。」
莉子は、奏斗から見えないようにオルトレトンの腕をきゅうっとつねった。
これ以上会話の内容を言うなよ、という合図だ。
通じたかどうかは謎なのだが。
「俺、トイレ行ってくる。あと、何か買ってこようか。」
イルカマリンスタジアムの横には売店が並び、自動販売機もある。
莉子はアイスティーを頼み、オルトレトンは水を頼んだ。
奏斗がいなくなると、莉子は小声で「それで?オルトレトンは何て言ったの?それに対してイルカは何て答えたの?」と尋ねた。
「俺は、楽しそうだなと言った。質問はしていない。」
もし楽しくなかったらイルカに怒られるじゃん!と莉子はのんきなオルトレトンの言葉にむっとした。
「で、イルカは?」
「人魚、なんでそこにいるの、人間みたいに陸にいるなんてアホみたいと言われた。」
「ぶっふ!!」
莉子は咄嗟に手で口を塞ぎながらも、思い切り吹き出した。
たぶん声(イルカ語?)を出したときに人魚とバレたのかもしれないが、イルカにアホ扱いされる人魚とは一体。
水族館で飼育されていることも芸をさせられていることも、イルカにとってが大したことではないのかもしれない。
確かに広い海を自由に泳ぎ回っているのに比べれば窮屈な思いをしているが、必ず餌をもらえ外敵はおらず体調が悪ければ治療もしてもらえる。
もしかしたら、ショーだってイルカには遊び感覚なのかもしれない。
人間が遊んでくれている、この遊びにはジャンプでのボールタッチや回転、他の仲間とのコンビネーションなどがあるが、それをクリアできれば美味しいご褒美をゲットできるし何より楽しい、くらいなのかも。
それぐらい楽観的にショーを見せてくれているのならいいなと思いつつ、そんなイルカにアホだと呼ばれる人魚って一体と、莉子はおかしくてたまらなかった。
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