水族館と人魚の約束

19/34
前へ
/671ページ
次へ
オルトレトンは単にお金を払ってみたかっただけなんじゃないかとか、扱い慣れていないから硬貨を落としたんだとか言いたかったが、それよりも人魚のオルトレトンが自分の分を払おうとして人間の莉子がまったく支払いに気付かなかったのがどうにも悔しい。 「だ、だって王子の方から買ってくるって言ったから、おごってくれるのかと思っちゃっても仕方ないじゃん。」 「そりゃおごる気だったし、請求もしなかったが、普通は払うよの一言があってもおかしくないだろ。そしたら俺もいらないって答える。」 「うー・・・ペットボトル代払う。」 「いらねえよ。それくらい。」 この野郎、だったら言うなよと莉子は奏斗を睨み付けたが、奏斗も引かない。 「おごられて当然ってのがおかしいだろって言ってんだよ。」 「誰もそんな風に思ってないもん!王子から何か買ってこようかって言われたから、アイスティーって答えただけで、すっごくすっごーく飲みたかったわけじゃないしさ。」 「あぁん?」 「だから!払うって言ってんじゃん!私だって、女の子はデート代を払ってもらうの当然って考え嫌なんだよね!」 「デ、デート!?デートじゃねえし!」 「はわわわわ!デートじゃない!デートじゃないけど、とにかくそういう考え方なの、私は!だから払うわよ!ちょっとうっかりしてただけだし!」 分かれ道の側で莉子と奏斗の言い合いが白熱していく。 なんだか妙な方向に話が逸れかけたところで、ふらりとオルトレトンが現れた。
/671ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2537人が本棚に入れています
本棚に追加