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「これは奏斗の分。これは莉子の分。」
オルトレトンは、二人に黄色と赤で彩られたアメリカンドッグの乗った容器を差し出した。
「俺の仲間は喧嘩になったら、それを見ているやつが何か食わせる。そうすると大概大人しくなる。腹が減ると怒りやすくなるし、そういうときの喧嘩の原因はくだらないことが多い。」
お腹が減っているかどうかは別として、喧嘩の原因がお金を落としただのペットボトル代を払う払わないだのであったため、莉子と奏斗はばつの悪そうな顔をした。
「食べろ。さっき奏斗は俺から金を受け取らなかった。だから今度は俺が払う。莉子には他にも世話になっているから。」
「ラッキー!」
自分はチャラだと喜ぶ莉子だが、考えてみると前回はすべて莉子がお金を出している。
今日も兄の服を新たに持ち出しているし、貴重なゴールデンウィークの一日はオルトレトンのためにまるっと潰れている。
アメリカンドッグ1本じゃ安すぎるかなあと思わないでもないが、せっかくなので「ありがとう!」とお礼を言っておごられることにした。
奏斗もオルトレトンに「気を遣わせちまってすみません。ペットボトル代より高いもんおごってもらって。」と謝りながらもアメリカンドッグを受け取った。
いざ食べようと持ち手の棒を掴んで持ち上げると、マスタードとケチャップがだばだばとしたたり落ちる。
どれだけかけたのよと莉子はアメリカンドッグの旨味を見事に消してくれたオルトレトンを見て、ぎょっとした。
同様に滴るマスタードとケチャップをものともせずにかぶりついている。
口の周りを汚しながらも漏らした感想は「そこそこ味がするな。これは辛いというのか。すっぱい気も・・・」だった。
それを見た奏斗が「・・・・・・これ、案外いけんじゃね?」と迂闊な予想をたてる。
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