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「ねー、とんでもない誤解でしょ。何たって私と王子は夏美も一緒にあの戦いを勝ち抜いた仲、言わば戦友みたいなもんだもんねえ。」
男女間のどうのこうのはない、莉子はそうきっぱり言った。
「だ、だよなあ。戦友って言い方はどうかと思うが、普通に友達程度だよなあ。」
「だよねえ。」
「ははは。」
「えへへ。」
二人の口から漏れた笑い声は、妙に乾いていた。
莉子にしてみれば、これまで王子を意識したことはない。
何と言っても1年生のときに同じクラスだったというのに、ほとんど口を聞いたこともなく、最初にオルトレトンを学校に案内して遭遇したときも、そういえばクラシック王子と同級だったっけくらいの気持ちだった。
奏斗にしても、莉子のことは「妄想暴走少女」という認識で、なんだあいつ変な奴と思いながらも特に友達付き合いをしたいと思うことはなかった。
それが、自分のジャズピアノを聴いてすごいすごいと喜ぶ姿や、自分に関わったがためにいじめ騒動に巻きこまれながらも見事に乗り切った手腕に、興味が湧いた。
また、莉子の兄のTシャツが非常に気に入ったというのもあり、奏斗にとって莉子はわりと好感がもてて遠慮しなくてもいい友人の一人となっていた。
だから、改めて「戦友」だの「友達」だのと言葉にすると、二人とも何だか妙な気持ちになってしまうのだ。
「あー、えっと、レンさん、アメリカンドッグごちそうさま。」
「ちょ、ちょっと待って、食べちゃうから。んんんー、味が!アメリカンドッグを殺戮して欠片ほどしか感じさせないこの味が・・・!ねえ、B級グルメってあるけどC級とかD級ってないのかな。そうだ、D級グルメって呼ぼう、これ。DEATH級グルメの略だよ。私、ナイスアイディア!」
「本っ当におまえ、デリカシーどこに落っことして生まれてきてんだよ。」
「失礼な。デリカシーの塊だっつーの。それよりさ、E級だとエレガント級グルメってならない?高級なやつだよ。」
どうやら自分で持ち出した「DEATH級グルメ」という単語が、莉子の妄想を刺激したらしい。
E級グルメはエレガントでR級グルメはロイヤルだからどこかの王室で食べるような超絶高級王様グルメってことで、その対極はパンピーグルメのP級ってどうかな!などと提案する。
おまえ・・・と呆れていた奏斗も、さすだに途中から吹き出した。
2人のそんな様子に、オルトレトンも満足そうだった。
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