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そしてそれ程に俺はアイツを特別扱いしていると自覚させられて、一人頰が全身の血液が集まったように熱くなり、何も集中できなくなってしまうのだから、手紙というものはどうもいけない。
『ちゃんと飯食ってるか?』『調子はどうだ?』
『何か辛いことはなかったか?』
そう書くのも悪くないのかもしれない。
だが、俺の指は天邪鬼で気の利いたフレーズなど出てきやしないのだ。
いつのまにか手紙の端がインクで黒ずみ広がっていた。書き直しだ。ああ、でもこんな調子で1日を終えてしまいそうな自信もある。
やはり、手紙なんか送るべきではないのだろうか。
一人テーブルと睨めっこをしてうんうんと唸る。
ようやく俺がテーブルから離れ、長く畳まれた足の悲鳴に気づいたのは家のインターホンがまぬけな音を立てた時だった。
「誰だ…こんな時間に…」
時計は朝飯時を表しているが、御構い無しにチャイムは響いていた。
扉のロックを外してガチャと音を立てて開くとバサリと何かビニールが擦れる音がした。
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