お前は大悪党

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…目の前でパタリと倒れた大きな体は目を見開いて俺を見ていた。 だが、俺も同じ顔をしていた。 「何故だ。」 信じられなかった。 あそこまで強く残酷に周りを壊していた悪党が目の前で膝を折っている事実が。 「何故、俺なんぞに油断したんだ。」 低く聞こえるか聞こえないかの声で男を睨む。 コイツは大物でもその小物でもどれだけ小さなネズミでも潰すほどに警戒心が強い男だった。 だから、 だからこそ、この状況が信じられなかった。 「…お前なんぞだったからさ」 にやりと笑った憎たらしい顔。 だが、その言葉を聞いて安堵している俺がいた。 よかった。 かの大悪党様は俺に絆されたわけではないらしい。 「それを聞いて、安心したよ」 (お前は死ぬまで大悪党でいればいいよ。) 銃口を眉間に当てると頭蓋骨がそれを押しとどめた。 「じゃあな、大悪党。 …ネズミ以下に油断したが負けさ。」 ——。 短い音と硝煙の臭いに鉄の臭いが混ざる。 銃口からは一筋の煙が空高く上がっていった。
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