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まあ、そんな事言ったら、あの探偵に冷めた目で見られかねないのだが。
猫はきまぐれと言われているが、もしそうならそれよりもよっぽど気まぐれな彼はどうなんだろう。
サラサラの漆色の髪。セットされた前髪はほんの少し乱れている。
整った眉とほんの少し赤らんだ目元。
白い肌に人形のような表情。
どこにそんな力がと思わせるほどに細い肢体はまるでガラス細工のようで。
そして全てを見通して暴く、何人たりとも逃がさない澄んだ蒼の瞳。
決して揺るがない意志と冷静な眼差し。
きまぐれに動き回り、謎が解けると興味をなくしたようにすぐに自室へと消えて文句はもちろん御礼すらもはねつける。
…正にその姿は高貴な猫だ。
いや、高貴というよりもゴミダメにさえ手を突っ込んで証拠品を探し出すのだから、逆にその姿はカラスに似ているのかもしれない。
「ありゃ、1人が一番好きなタイプだな。」
恋人ができないのも分かる。
黙ってるだけならイケメンなのに。残念な奴。
だが、関わりすぎると本当に嫌われてしまうだろうし自分がバカに思える。
…ああ、なんか、それは嫌だった。
ねぉ、ねぉ?とクロが餌を食べ終わってから、うんうんと悩んでいる俺の方を見つめた。
「ううん、なんでもない。」
クロはまた、ふん、と鼻を鳴らした。
「…所詮、依頼人と探偵だもんな。」
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