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「ん?何がかな?」
「とぼけないでください。わざわざ言わずともわかってるんでしょ。」
探偵は、ふむ、とコーヒーから手を離して顎に手を当てた。
「単純なんだけどな。待つのは退屈だろうと思っただけなんだ。」
「退屈って…探偵さんが?誰かを待っていたんですか?」
ということは、誰でもいいから、探偵さんの待ち人が来るまでの暇つぶしにしたかった…ということだろうか?
「いや僕じゃない。キミだ。」
「え?お、俺?」
「混み合っている中で待つのは退屈だろう?
それに僕が誰かを待っていたのなら、相席など頼まないさ。ここは2人席だし、依頼人の話を聞くときに邪魔になってしまうだろう?」
「邪魔って…」
別に俺は誰も待ってないんだけれど…!
「ただ、キミの言っていることもあながち間違いではないさ。僕も1人で食べるのには飽きていたし、キミの猫の事も聞きたくて。」
「!覚えているんですか?」
「もちろん。クロさん、だろう?」
猫にまで、さん付けとは。
おそるべし紳士さん。
「クロは元気ですよ。今や食欲も旺盛で。」
「そうかい。ならよかった。保護した時にあまり元気がなかったものだからさ。」
「はい…。その節は本当にお世話になりました。」
「僕は探偵だし。依頼だからね。」
探偵さんはカップをまた両手で持って温度を確かめていた。
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