待ってるだけでも、考えているだけでも

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しばらくザワザワとした店の声を聞いた。 「それにしても混んでますね。今日。」 「そうだね。休日ということもあるし、最近は野菜や肉が高価だっていうこともあるだろう。どうも今年は不調らしい。ここは一律して安いからね。」 「ああ…。ニュースでそんなの言ってたな。」 「全ての事には原因がある。とても初歩的なだ。」 「へぇ…。やっぱ探偵ってすごいんですね。」 「単なる好奇心だよ。キミでもできる。一番難しいことは謎を解く事ではなく、謎を謎だと認識すること。即ち謎を見つけることさ。」 「謎を…見つける…?」 「そうだね。例えば、隣の席の家族連れを見ておくれ。あれを見て何か思わないかい?」 「何か…?」 家族連れ…。 両親と女の子1人、男の子1人の家族。 特に変わったことはなくて幸せそうだ。 「…うーん…?」 「なんでもいいんだ。純粋な疑問で。」 「じゃあ…あのくらいの子供だから、両親は30後半くらいかな…とか?」 「成程。他には?」 「えっと…男の子が女の子にデザートあげてるから…お兄ちゃんなのかな…とか。」 「成程。他には?」 「う、ううん…ええと…」 そんなにすぐと言われても… 困っていると探偵さんは、また、ふむ、と頷いた。 「いいよ。なかなかいい。だが、まだまだだ」 「…すみません…」
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