22人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ。共働きならぬ一家働きというものなのさ。児童労働はなんとやらとはよくいうものだ。」
そこまで言ってから探偵はコクリ、とコーヒーを飲む。
「…すごい。」
ポロリ、と言葉が口から飛び出した。
「探偵さん!凄い!全然気がつかなかった!すらすらってそんなに推理しちゃって!…それに、とっても…とっても!なんかカッコいい!」
興奮で我を忘れて、少し大きな声で話してしまった。家族連れが不思議そうにこちらを見てきて、あ、と恥ずかしくなる。
「ご、ごめん…俺、つい…」
「…いや。気にしなくていい。」
怒っているだろうか。
不安になってちらっと探偵さんを見るが、
どうも怒っているわけではなかった。
それどころか、落ち着きなく重ねた指を組み替えたり離したりくっつけたりして。
これは…
照れてるのか?
「こんなものは凄くともないさ。僕の姉ならきっと名前や出身さえも見抜くだろう。」
「姉?お姉さんがいるの?」
「まあね。あまり会ってはいないが。」
なんだろう。
名前も知らない探偵さんが初めて明かしてくれた事実。
それはなんだか、ゼリーの表面の外へと拒まれていた存在をそのゼラチンの中にスプーンを差し入れていくような。
それにしても、姉弟そろって頭がいいのか…。
最初のコメントを投稿しよう!