待ってるだけでも、考えているだけでも

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ーー 「あの人の言うことはわからない…」 家に帰ってからクロを撫でる。 ねぉ…と寝息をたてるクロは本当に愛想がいい。 探偵さんの言っていたノラは死んでしまったのだと考えるとどんな一瞬でもクロを手放したくないと考えてしまう。 だが、別にこうやってクロが寝ているだけでも十分に満たされる。 温もりがあるのだから。 起きた時に、クロがまた、ねぉ、と鳴くのを想像していると十分に満たされる。 そう、起きるのを待つだけでも楽しい。 ふと、探偵さんの言葉がまた蘇った。 『僕は退屈なんかしなかった! 今日はまったく退屈なんてしなかったんだ! ああ。ずっと楽しかったのさ!』 猫が死んだら、それは退屈ではない。 焦りや悲しみだってあるし、心は乱されてばかりだろう。 だが、"楽しかった"? いや、楽しかったのは"今日"ではない"ずっと"だ でも、"ずっと"、とは? 「また謎ができてしまった。」 今度あったらまた聞き出してやろうか。
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