メモに書き溜めていた短編集

白紙の手紙

『お変わりないですか。』の続きの文が書けない。

我ながら情けないと思うが、文才というものは中々身につくものではないということなのか。いいや、そもそも続きを書けないのは自分が淡白だからということを知っている。

あまりにも月日が経ってしまったから、アイツに手紙を送ってやろうと思い切ってペンを取ったのが間違いだった。…というか俺から手紙が届いてアイツは喜ぶんだろうか？

そんな疑問を浮かべても、すぐにアイツが嬉しそうに手紙の封を開ける姿が浮かんで解決する。
別に自意識過剰とかでは無い筈だ。
それ程までに愛されていると自覚がある限りはやはり手紙を書き切らなければならない。

…思い切ってまたペンを握る。

だが、やはり俺の手は調子の良い文をサラサラ書くことはなく鈍臭い様子で右に行ったり左に行ったりを繰り返し、トントンとリズムを刻みながらインクの跡を手紙の端に残していくことしかしない。

適当に書けば簡単なのだろうが、これがアイツの手に渡ると考えるとどうもそんな調子の良いことなんか書けやしないのだ。