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母屋へ入るとだんだんと空気が熱くなっていき、台所に続く部屋の前まで来ると襖の向こうが赤く燃えていた。カヤは一瞬足を止めると大きく息を吸い込み息を止めると思いっきり襖を開けた。熱気がカヤの体に襲い掛かってくる。
「トヨー!」
ありったけの声を張り上げてトヨの名前を呼ぶ。台所側の壁から天井にまで火が燃え広がり、床が熱かった。口の中がからからに乾いてさらに舞い上がる煙と熱気のせいで目が痛くなる。部屋の隅に、炎とは違う赤色が見えた。
「トヨ!」
トヨは膝を抱えてうずくまっていた。
「怪我はないかい?痛いところは?熱いところはない?」
トヨを立たせて全身を確認する。顔は火照り、腕や足も擦り傷や小さな火傷はあるものの大きな怪我は見当たらない。カヤはトヨの手を引き、外を目指して力いっぱい走った。
渡り廊下から店の中に入ると、先ほどまでの熱気が嘘のように体中から抜けていった。ゲホ、ゲホとトヨが咳きこんだのに気がついて、カヤは走るのをやめた。トヨと一緒に、廊下に座り込む。
「トヨ、大丈夫?」
咳き込むトヨの背中を、カヤは何度もさすった。苦しそうに咳こむトヨの口から、だんだんと嗚咽が混じりはじめた。
「トヨ・・・。」
「こわ、かった・・・。」
「うん。」
「こわかったぁ・・・、こわかったよぉー。」
トヨはぼろぼろと涙を流して泣きじゃくった。カヤも一緒に泣いた。
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