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カヤの引込禿としての成長は驚くほど早かった。挨拶の仕方から話し方、着物の着方、身のこなしといった基礎から、唄や舞、お茶、お花、書道と毎日息をつく暇もないほど、カヤはたくさんのことを暁や紅葉、姐さん遊女たちから教わった。それだけではなく、分からないことや知りたいことがあれば暁や紅葉に質問し、男衆や世話役、牡丹屋を出て里の者にまで話を聞きにいくようになった。話の内容は分からずとも遊女屋の人たちが話すことをじっと聞いていたり、里の人たちの世間話もよく聞いていた。禿の証である真っ赤な着物に黒い帯を着て里中を元気よく駆け回っているカヤは一躍里の人気者となった。暁はどんなに疲れていてもどんなに忙しくても、カヤが寝る前に話すその日の出来事を頷きながら、ときに諭しながら聞いてくれた。もちろん楽しいことばかりではない。カヤもまだ七つの子どもだ。稽古に身が入らないとき、わがままを言うときもある。家に帰りたい、母に会いたいと泣きながら暁に訴えたこともあった。しかし叱られて泣いて、牡丹屋の禿や他の店の禿たちと愚痴を言いながら、伸び伸びと成長していった。
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