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カヤとトヨ
カヤが九つになった頃、牡丹屋に新しい禿がやって来た。女衒が連れてきた六人の中で、暁が周りの反対を押し切って買い取った子だ。
「名前はトヨだ。カヤと同じで引込にするよ。」
その言葉に、皆が驚いたように目を見開いた。カヤも同じように動揺を隠せなかった。なぜならトヨと呼ばれた少女が、見るに堪えない姿だったからだ。髪は乱れて絡まり、顔や体はある程度洗われてはいるもののどこかほこりっぽく、前髪からちらりと見える目はくぼんでいた。ぼろぼろの着物から伸びる手足は棒のように細く、まめだらけ、傷だらけだった。
「この子は、今はこんななりだけどね、将来は絶対いい女になるって私の直感が言うんだよ。それにカヤの妹になれば、二人で互いを支えあうこともできる。ひと目見て、この子はカヤの妹になる子だって確信したんだ。みんな思うところはあるだろうけど、可愛がっとくれ。頼む。」
暁はそう言って頭を下げた。と、紅葉がふっと息を吐いた。
「なんで頭を下げるんです?暁姐さんが決めたことに口出しなんてしやしませんよ。ねえみんな。」
紅葉の言葉に全員が頷く。カヤも妹ができたことが嬉しくて、首を大きく縦に振って頷いた。
「カヤ。トヨのこと、よろしく頼むよ。」
暁がトヨを連れて目の前に来た。カヤは元気よく「はい!」と返事をしたが、トヨは黙って俯いたままだった。
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