4人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
宏樹は激怒した!
宏樹(47)は激怒した。
この屈辱、必ずや晴らしてみせると心に誓いを立てた。
同じ会社の同僚であり、五つ年下の事務員である荻美佐枝(40)。年齢を感じさせない美しさと格好良い働きぶりに惹かれ、彼女とお付き合いをさせていただきたく告白したのはつい昨日のことである。
確かに宏樹は、一般的な男性の中ではやや不細工かもしれない。
そしてほんの少しばかりぽっちゃりめであるのかもしれない。
しかし、190cmを超える長身を宏樹は誇らしく思っていたし、ついでに言うとナニの大きさにもずいぶんと自信があった。
もっと言えば女性に優しく接することに関しては特段に気を使っていたつもりであるし(ちょっとばかり女性と話すときに緊張で吃り気味になったりしたり、後輩のイケメンに少しばかり嫉妬して仕事を押し付けたりとかはしてしまったりもしたが)、器も大きく物理的にも力持ち。極めて紳士であるという自負があったから尚更である。
だが残念なことに、美佐枝のフリ文句はあまりにもストレートかつ無慈悲なものだったのだ。
「私、不細工に興味ないの。嫉妬深い奴も嫌い。高嶋君みたいに、背が高くてかわいくて、性格も穏やかな人が好きなのよねー 」
なんて酷い勘違いであろうか。
しかも、嫉妬深いなど完全に誤解だ。ちょっと後輩のイケメン(高嶋大悟(30))にムカついて仕事を少しばかり多く投げつけてしまったこともあるがその程度である。性格が穏やかなのは自分も同じだ、少なくとも女性に対しては怒鳴らないようにしているのに何故そのような誤解を受けるのか。
その誤解を、なんとしてでも解かねばなるまい。
そのためにはまず――自分が“ほんのちょっと不細工に見えるだけ”で、あのイケメン高嶋と大して変わらぬ普通の男であることを証明しなければ。
――かわいいのが好き、と言っていたな。今は女性も、男性にかわいいを求める時代か……ならば!
それからの日々、宏樹は努力に努力を重ねた。彼女の好みや趣味を調べあげ、その理想に少しでも近づけるように奮闘したのである。
顔立ちは変えられなくても服装や印象はいくらでも変えられる。あの高嶋と別の方向で攻めるならば――このやり方しかあるまい!
最初のコメントを投稿しよう!